+兄弟+
Scean6


時は夜の10時をまわっていた。
智樹との会話の後拓弥はずっと自分の部屋で考え事をしていた。
拓斗も部屋からは一切出ては来なかった。
「、、、もっかい行ってみるか、、、」
ベッドから起き上がると拓弥は拓斗の部屋に向かった。
『コンコン、、、』
返事は無い。
「拓斗?起きてるか?」
「、、、なに?」
「ちょっと、、、良いか?」
「、、、、、、」
『カチャ、、、』
ドアが開く。
目の前には拓斗が立っていた。
ずっと泣いていたのか、眼の周りは真っ赤になっていた。
「おい、、、顔大丈夫か?」
「うん、、、大丈夫だよ、、、兄貴、、、さっき、、、ゴメンね、、、」
「あ、、、気にすんなって。ちょっと驚いたけど、、、さ、、、」
「、、、、、、」
「あ、、、ちょっと、、、良いか?」
「うん、、、」
そう言うと2人はベッドに腰掛ける。
その後は沈黙が続いた。
会話はなく、数分が何時間にも感じられた。
「なぁ、、、もし良かったら、、、話してくれないか?
その、、、なんでこんなに苦しんでるのか、、、さ。」
「、、、言っても、、、きっと解ってくれないよ、、、」
そう言う拓斗に拓弥は、
「でも、、、そんなの言ってみないと解らないだろ?
それに智樹の奴も心配してきてくれたんだぜ。」
「え、、、智樹が?」
「あぁ、、、まぁ、、、嫌だったら、、、良いけど、、、」
「、、、、、、」
また沈黙する、、、短く長い沈黙、、、
『プルルルル、、、』
突然電話が鳴る。
「あ、、、誰だろ?こんな時間に、、、」
拓弥はその場を立ち電話に出ようと部屋を出ようとした。
すると拓斗は拓弥のシャツの裾をつかみ、離そうとしない。
「拓斗?、、、どうした?」
「、、、一緒にいて、、、今だけでいいから、、、」
「拓斗、、、」
電話の音はすぐに切れてしまった。
そんなに大事な用でもないのだろう、、、と拓弥は思った。
「どうした?」
「、、、兄貴は、、、俺の事どう思ってる?」
「えっ、、、どうって言われてもな、、、まぁ凄いとは思うな。何でもやっちまうし、、、」
「、、、そんなこと、、、ないよ、、、そんなこと、、、ない、、、」
少し震える声で拓斗は話した。
「でもお前勉強とかなんでも、、、」
「そんなこと、、、そんなことないんだよ!!俺、、、本当は、、、本当は、、、」
拓斗はその場に泣き崩れてしまった。
「おっ、、、おい、、、拓斗、、、」
「何も、、、何も出来ないよ、、、俺、、、」
泣きながら拓斗は話しつづけた。
「本当は弱いんだ、、、本当は、、、一人じゃ何も出来なくて、、、
一人でよがって、、、自分の首絞めて、、、」
「拓斗、、、」
「本当は『助けて、、、』って言いたいんだ、、、でも、、、でも言えない。
言えば誰かに迷惑がかっちゃう、、、
自分だけ苦しむだけで済むなら、、、その方が絶対に良いって、、、
でも、、、でも本当は、、、助けて欲しいんだよ、、、本当は、、、」
赤くなった眼から再び大粒の涙がこぼれる。
そんな拓斗を拓弥はそっと自分の身体に拓斗を寄せる。
「拓斗、、、」
返してやれる言葉が無かった。でも何かをしてやりたい、、、
苦しんでる、、、助けを求めてる自分の弟にしてやれる事、、、
全てを受け止めてやる事、、、拓弥にはそれしか思い浮かばなかった。
「あ、、、にき?」
「ゴメンな、、、拓斗、、、俺、、、一番、、、一番近くにいてやったのに、、、
お前の事全然解ってやれなくて、、、」
「あに、、、き、、、」
「もっと早くに気がついてやればよかった、、、
こんなに傷だらけになって、、、どうしようもなくなるまで、、、」
「、、、、、、」
「一人で悩む事なんて無い、、、これからは俺がお前を助けてやるよ、、、」
「あに、、、き?」
「、、、お前がまた、、、どうしようもなくなった時、、、助けてやる、、、」
「、、、でも、、、そんな事、、、」
「拓斗、、、俺は本気だよ?
お前俺に、自分は凄い辛いって言ったよな?
お前がどんな事で悩み苦しんでるなかなんて、、、解らないかもしれない、、、
だって、俺はお前じゃないから、、、
でも、お前の支えになることくらいは出来るだろ?」
「、、、、、、」
「どんなことでも良い、、、苦しくて、、、どうしようもなくなったら、
俺の所来いよ、、、俺はいつでもお前の傍にいるんだから、、、」
「あにっ、、、き、、、」
そう言うと拓斗は拓弥に勢い良く抱きついた。
「ぅっわ、、、突然になんだよ。」
「兄貴、、、兄貴、、、」
「拓斗、、、」
拓弥もそっと拓斗の後ろに腕をまわし抱きしめる。
「兄貴、、、有難う、、、有難う、、、」
拓斗は拓弥に抱かれ、その胸で泣いた。
「へへっ、、、気にするなって、、、俺お前の兄ちゃんだぞ?
頼りにならない兄ちゃんじゃカッコつかないからな。」
「、、、馬鹿、、、」
「はは、、、馬鹿でも良いさ、、、馬鹿だって、、、
お前を守る事くらいは出来るしな、、、」
拓斗は拓弥の身体にしがみつくように強く抱きついていた。
拓弥も、この抱きとめる手は離しちゃいけない、、、
そう思ってた。


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