+brotherly+
+affection+
会いたい人


服を調え、拓斗は拓弥に寄りかかるような状態でいる。
顔はとても穏やかで、嬉しそうな表情をしていた。
純粋に嬉しかった。こうして兄貴のそばにいることが嬉しかった。
少しすると、拓弥は思い出したように言う。
「あ、そうだ。思い出したんだけど、お前さっき店の前でうろうろしてただろ?」
「えっ!?」
自分が店の前でうろついていたことを拓弥は見ていたのだ。
「きっ、気づいてたんだ…」
「気づいてたって言うか、あれだけうろうろしてれば嫌でも気がつくって。
夜だったからまだ良いけどさ、昼間あんなことやったらマジ捕まっから気をつけろよ」
笑いながら言う拓弥に、拓斗は顔を真っ赤にしながら無言になってしまう。
「そんな気にすることないのにさ、普通に来れば良いじゃん」
そう言う拓弥に、拓斗は恥ずかしそうに言う。
「だって、早く兄貴に会いたくて来たってこと…凄い恥ずかしいから…」
声は小さくなり、顔もさっき以上に赤くなる。
そんな拓斗を見ると拓弥はまた笑い、そして拓斗を抱きしめる。
「ん〜拓斗はホント良い子だよなー」
冗談まじりに拓弥が言う。
「さてと、そろそろ戻んないとな」
「うっうん」
適当に部屋をきれいにすると、一緒に玲於奈のところへ行く。
「わりーわりー遅くなった」
「遅くなったじゃねーって。もうすぐバイトの時間終わるぞ」
玲於奈は少し不満そうに言う。
「だから悪かったって」
「ったく。まぁ良いや。そろそろ終わるし、先帰っても良いぜ?」
「マジ?んじゃお言葉に甘えて…」
拓弥は自分の荷物を取りに裏の方へと行く。
「あのっ、ほんとスミマセンでした」
拓斗は玲於奈に頭を下げる。
「ん?あぁそんな気にしなくても良いって」
「よっしゃ。拓斗ー帰るぞー」
拓弥の呼ぶ声が聞こえる。
「あ、うん。」
「んじゃまたなレオ」
店を後にしようとすると、玲於奈が2人を引き止める。
「あぁそうそう、言い忘れてた。」
「なんだよ」
「…やるんだったら場所考えろよな」
「えっ!?」
玲於奈の言う言葉に、拓斗は驚く。
しかし拓弥は何事も無かったかのように返事をする。
「あっ、やっぱバレてた?」
「バレてたじゃねぇって、アレだけ音と声聞こえりゃ誰だって解るって。
まぁ客とか俺以外いなかったから良かったけどさ」
玲於奈もまた何事も無かったかのように話す。
「って、おい。拓斗?」
拓斗はその場に呆然と立ち尽くし、それに気がついた拓弥が声をかける。
すると拓斗はすぐに我に返り、拓弥に詰め寄るように聞く。
「どういうことだよ!!」
「あん?どういうことって言うか、レオは全部知ってるぜ?」
全部を知っている。
それは自分と兄貴との関係のことを指していることはすぐにわかった。
「知ってるって…」
「大丈夫だって、レオは信じられる奴だからさ」
兄貴がそう言うのなら心配ないとは思った。
けれど、やはり誰かに知られていたということはショックだった。
出来ることなら、誰にも知られたくなかったことだから…
「どうしたんだよ?」
拓弥がそう聞き返すと、拓斗は無言でコンビニを後にする。
「おっおいっ、待てって。わり、んじゃまたな」
玲於奈にそう言うと、拓弥も拓斗の後を追ってコンビニを後にする。
「大変だねぇ」
苦笑いしながら玲於奈は拓弥を見送る。
外はもう、少しだけ明るくなっていた。


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