+brotherly+
+affection+
自分の気持ち


「よっぽど疲れてたんだな」
拓弥は自分の肩に顔を寄せる拓斗の頬に、右手を触れる。
さっきまで感じていた雨水での冷たさはなくなり、温かさが伝わってくる。
「……」
拓弥は無言で拓斗の身体を両手で支えるようにしながら、
ベッドへと横に寝かせる。
雨で濡れた服も、既に乾ききってしまっていた。
拓斗の頭に乗せたままのハンドタオルを取り、
調べるように髪に触れる。
「乾いてるな…これなら大丈夫か…」
そう言うと髪に触れた手を、そのまま再び頬へと持っていく。
「…大丈夫…智樹ならきっとわかってくれる。
お前は智樹のことが大切で、大好きなんだから…
だからきっと智樹もお前の気持ち、解ってくれるさ…」
確かに眠っていた。
だけど拓斗には、かすかに拓弥の声が聞こえた気がしていた。
「う…んっ…」
「おやすみ、拓斗」
拓弥は拓斗を起こさないように、そっと部屋を後にする。
遠くなる意識の中で、自分の思いは強く固まっていた。
明日には智樹に伝えよう。自分の口で、大好きな智樹に伝えよう。
大切なものを無くさないために…
雨の音は小さくなっていき、夜中には月明かりが部屋の中に差し込んでいた。


[1]+Back+