+tentacle2+
「あのっ…あれ…」
ジュンはまるで人を呼び止めるような声を出して音の聞こえた場所にやってくるも、
そこには人の姿も、動物の姿も見えない。
「おかしいな…確かに、ここから音が聞こえたはずなんだけど…」
そう言って辺りを見回そうと歩き出した瞬間、足元に今までに感じたことない感触が伝わる。
靴を履いていてもはっきりと解るほどに、ブヨブヨとした感触を感じる。
「えっ…なに、これっ…」
ジュンはその場に腰を落として、自分の踏んだものを確認しようとする。
そしてその瞬間に、ジュンの両腕に踏んだものと同じような感覚のものが、勢い良く絡みついてきた。
「えっ、えっ?!」
突然のことに何が起こったのか解らないでいると、ジュンはその絡みついてきたものに身体を引っ張られていく。
さほどの力でもなかったが、歩き続けて体力の失われているジュンはあっさりとその場に倒れ込んでしまう。
「うわっ…なっ、なにこれっ!」
ジュンが倒れ込むと、今まで平らだった場所が脈打つように動き始める。
同時に固い地面は弾力性を持ち始め、ヌメヌメとした液体のような感触を頬に感じた。
「なっ、なっ…」
何が起こったのか解らず、ジュンはその場から立ち上がって逃げ出そうとする。
しかし両腕に巻きついた触手は、ジュンがどんなに動こうとも放してはくれない。
「なっ…なんなんだよっ…これっ」
それでもジュンはその場から逃げ出そうと必死になるが、力のない身体ではどうすることも出来なかった。
やがて自分の腕に絡みついていた触手は数を増やし、ジュンの両足にも絡みついてくる。
「やっ…やだっ…放せっ!」
押さえつけられたまま四肢を無造作に動かして、ジュンは身体を解放させようとする。
「いっやだ…いやだっ!」
それでもジュンの身体に絡みつく触手はひとつたりとも放れることなく、その数を増やしていくばかりだった。
「やだっ…やだぁ…っ! えっ!」
やがてジュンは抵抗する力をなくすと、自分の身体が浮き上がるのを感じた。
そしてそれは、今自分の身体を取り巻く触手が持ち上げているのだとすぐに解った。
「なっ…なんなんだよ…これっ…!」
暗くて何も見えない世界の中で、この世のものとは思えない体験…ジュンの頭は混乱するしかなかった。
力をなくして浮かされてもなお、ジュンは必死に身体を動かして自由になろうとする。
「はなせっ…はなせぇっ!」
けれどジュンの声ばかりが響き渡るばかりで、状況に変化は見られない。
やがてその大きく声を上げるジュンの口の中に、身体を押さえつけていたものが入り込んでくるのを感じた。
「なっ、っぐ!」
ジュンはそれをとっさに感じ取って口を閉じようとするが、入り込んできた触手が唇に触れた瞬間、口を閉じることを拒絶してしまう。
感じたことのない異様なまでのぬめりと、ゴムのような感触…気持悪くて口を閉じることが出来なかった。
「っぐんぐっ!」
口へと入り込んだ触手はジュンの喉奥へと入り込むと、突然液体を吐き出す。
ジュンはそれを吐き出すことも出来ず、流し込むように身体の中へと沈めていった。
「んっ…んっんぁぁっ…な、なにっ…これっ…」
ジュルジュルと音を立てて口の中から触手出てくると、ジュンは全身から力が抜けていくのを感じた。
身体の感覚がなくなっていき、意識が朦朧としてくる。
「はぁっ…はぁっ…うっぁ…」
そして抵抗する力を完全に失ったジュンは、やがて熱い吐息を漏らし始める。
何かをされた訳でもなく、ただ身体が火照って熱くなる。