+Love You+
一話/約束
Scean7
完全に空の明かりは消え、暗闇の世界へと変化する。
友紀哉は衣服こそ整えたものの、その表情からは完全に生気が抜けていた。
まるで生命を感じさせない瞳も、大量に流した涙で赤く腫れ上がっていた。
「…違うよね…将幸君は、そんな人じゃないよね」
壁際に座り込んでいた友紀哉は、突然うわごとのように口にし始める。
ゆっくりと身体を起こして立ち上がりながら、何度もうわごとを言う。
「将幸君…寂しいんだよね…誰にも、本当に愛されてないから…」
俯いた顔は上を向き、真っ暗な夜空に目が向けられる。
「…だから、あんなにセックスしたがるんだよね…」
将幸を好きになった理由は、単なる外見に過ぎない。
だから将幸がどんな人物なのかを、友紀哉は全くと言って良いほどに知らなかった。
「…将幸君は、大切にされたことがないんだね…だから、あんなこと言ったりするんだね…」
しかしそれが災いして、友紀哉の将幸像は自分勝手な理想の姿へと固められていた。
自分の理想とする姿が、本当の将幸なのだと…
「大丈夫だよ…僕は、僕は将幸君のこと…大好きだから…」
誰もいない屋上で、友紀哉はうわごとを言い続ける。
雲ひとつない満天の星空の下で、誓いを立てるように口を開く。
「僕は…将幸君を本気で愛してる…お遊びなんかじゃない…本気で、本気で愛してる…」
自分の空想の姿を本当の姿として考えていると、友紀哉は全く感じない。
そして自分の心がおかしくなっていることすらも、解らなかった。
大好きな…愛するものを守りたいと思う気持ち…たとえ歪んでいたとしても、おかしいと思える訳がなかった。
友紀哉は星空を眺めながら、ふたつのことを心に誓う。
「将幸君…僕が、守ってあげる…将幸君のことは、僕が愛してあげる…」
『将幸のことを守る』ことと、『将幸のことを愛する』ということ…
友紀哉はただ、大切な人のことを愛したいだけ…守りたいだけ…
しかしそれは、友紀哉の一方的な思い込みに過ぎない。
その思い込みを絶対に守り通してみせると、歪んだ想いを心に刻む。
「僕が…守って、愛してあげる…絶対…絶対に…」
僕の約束…将幸を守るという、僕だけの約束…
「将幸君…愛してる…」
友紀哉は静かな屋上で、一人将幸を思い続けていた。
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