少年調教日記
2nd edition


「はぁっ…はぁっ…すげーな、兄ちゃん。俺全然ついていけないよ…」
翔太は大きく息を切らせながら、恭介に向かって尊敬の言葉を口にしてきた。
「…いや、このくらいならちょっと練習すれば出来る…」
翔太との距離を僅かに取りながら、恭介は泥だらけになったボールを手にする。
その視線は翔太の方ではなく、やはり別の場所を向いていた。
「ホント、かなぁ…俺も、兄ちゃんみたいになれっかな…はぁっ、はぁ…」
「あ、あぁ…すぐには無理かも知れないけど…っ!」
その言葉と同時に、恭介は一瞬だけ翔太に目を向けた。
その瞬間に恭介の目線は、翔太の姿に釘付けになる。
その姿は暑さから着ていたユニフォームをはだけさせ、素肌をあらわにさせていた。
思っていた以上に幼い身体つきの翔太は、触れなくてもその感触が伝わってくるような気がした。
「…? 兄ちゃん、どうしたんだ?」
「あっ、いやっ…ちょっと目に砂が入ってな…」
大雨が降った翌日の広場に、目に飛んでくる砂などある訳がない。
子供しかだますことの出来ないような言葉を口にしながら、恭介は自分の胸の高まりを抑えようと、両手で自分の胸を押さえ込む。
ドクドクといつもよりずっと早い鼓動が、両手を通じて伝わってきた。
…やばい…止まらない…
それどころか両手に感じる早い鼓動が余計に恭介の気持ちを高ぶらせ、翔太に持つ欲望を大きくさせようとする。
「くそっ…くそっ…」
正常な気持ちが押さえ込もうとしても、欲望がそれを突き破って出てきそうになる。
心の中だけで口にしていた言葉が、表にも出始めていた。
「あーぁ…ユニフォーム汚れちゃったな…お母さんに怒られるかな…」
そんな恭介のことをよそに、翔太は着ているユニフォームに目を向けていた。
その言葉に気がついて、恭介は少しだけ視線を翔太に向ける。
「…身体も、汚れてるな…」
僅かに見るだけでもユニフォームだけでなく、身体も汚れているのが解った。
「うん…どうしようかな…」
流石に泥だらけの姿で帰ることに罪悪感のようなものを感じたのか、翔太はその場で悩みだす。
そしてそんな翔太の姿を見た瞬間に、恭介の口は自分の意思とは無関係に動いていた。
「うち…来るか? 近いんだ…」
言おうとしたつもりなどない。
まるで誰かが口にした言葉を聞いたような…そんな感覚だった。
「良いの? 兄ちゃんち行っても…」
たとえ恭介がそう思ったとしても、その言葉を恭介自身の言葉として聞いている翔太は、少しだけ申し訳なさそうに返事を返してきた。
「あぁ…俺一人暮らしだからな…俺んちでシャワーでも浴びてけば良いよ…」
もう自分の意思と発せられる言葉には、何ひとつの繋がりもない。
気がつけば自分は、翔太を家に来るように誘い掛けていた。
「うんっ! じゃあそうさせて貰うね。やっぱりこんな汚い格好じゃあ、お母さんに怒られちゃうし…ありがと、兄ちゃん」
そう言うと翔太は、恭介に向かって微笑みかけてきた。
…この時になって恭介は初めて翔太の姿をはっきりとその目に収め、そしてその姿を見続けた。
不思議な感覚だった。
眠りにつくときのような、とても安らかな感覚…
自分の意識が、遠のいていくような気がした。
「じゃあ…俺の家こっちだから」
「うんっ!!」
そう言って恭介は歩き出し、翔太はその後ろを小走りでついて行った。


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