+抱いて欲しい+
ことの後は二人で裸のまま、布団の中へと潜り込んでいた。
龍平は裕明の肩に寄り添うように、身体を委ねてくる。
「ねぇ…裕明さん…」
「どどど、どうした?」
かけられた言葉に対して、裕明は所々裏返ったような声で返事を返す。
「どうしたの? なんか…嫌がってない?」
「べべっ…別に嫌がってなんか…」
身体を重ねている最中は無我夢中になっていたせいかも知れないが、改めてこうして裸の龍平が隣にいると思うと、異常なまでに緊張してしまう。
常識で考えたって、ありえないと思っていた環境…それが今ここにある。
「本当…かな?」
「ほほっ、本当だって…本当。本当」
目は完全に泳ぎ、龍平の方を見ようともしない。
その身体を目に収めるだけで、心臓が止まってしまうような気がした。
それくらい、裕明の心はいっぱいいっぱいになっていた。
「…ふーん。じゃあ…」
龍平は最初、裕明に嫌われたのかと思っていた。
しかし時と共に、それが緊張でそうなっているのだと気がつく。
すると先程までは裕明が龍平に意地悪な言葉をかけていたのに対し、今度はその立場が逆転する。
「裕明さんは、俺のこと好き? 俺と、またえっちしたい?」
「うええっ!! そ、それはっ…」
返事する回答は決まってる。ただその返事をはっきり言うのは、何故だか出来なかった。
これ以上に、奇跡が起こるとは思えなかったからかも知れない。
「ねぇー…答えてよー」
甘えるような声を出しながら、素肌を裕明の身体にこすりつけるようにしてくる。
「だからっ…そのっ…」
「だから?」
「だからそのっ…」
似たような言葉が繰り返され、会話は先へと進まない。
「だからばっかじゃ進まないって! ちゃんと答えてよ!」
はっきりとした返事を返してはくれない裕明に、龍平の怒るような声が浴びせられる。
「え、ぇう…そっ、そんなの…すっ、好きに決まってるじゃん! えっちは…ま、また…さしてくれんなら…」
すると裕明はそんな龍平に押されるままに、恥ずかしがりながら横を向いてそう口にする。
「…うんっ!! 俺も裕明さんが大好きだよっ!!」
「うっわ…」
その返事を聞くと龍平は満面の笑みを見せ、裕明の胸に勢い良く飛びつき、そして力強く抱きしめる。
「だからまた俺とえっちしてねっ!! 裕明さんっ!!」
そして力強い声で、嬉しそうにそう返事をかえしてきた。
『ま…また…龍平とえっちが…』
夢なら覚めないで欲しい…裕明はそう思いながら、龍平のことを抱きしめていた。
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