+一年に一度だけ+
Scean6
「もう大丈夫か?」
「うん…」
目を真っ赤にした織人がそう小声で言うと、
2人で家を後にする。
駅までの暗い道のりはお互いに話すことがなく、無言が続く。
そして駅に到着すると切符を買い、2人そろってホームへと向かう。
最終電車ということもあって、周りにはもう2人以外の姿はなかった。
ドアの前に立ち、後ろに立っている織人の方を向く。
「…織人…ごめんな…」
「えっ…」
突然言われたことに驚きつつも、星夜の言いたいことを理解する。
さっき自分の言ったわがままが、きっと星夜のことを悩ませていると…
「…もう…大丈夫だよ。ゴメンね、わがまま言って…」
「でも…」
落ち込む表情を見せる星夜に、織人は笑顔を見せながら言う。
「星夜が言ったように、俺も来年また星夜に会うの楽しみにしてる。
だから星夜も、楽しみにしてて欲しい…」
「織人…」
そう言うと星夜は織人のことを抱きしめる。
「星夜…」
そして織人もまた、星夜のことを抱きしめる。
お互いの温かさ…ずっと忘れないようにするために、きつく抱きあっていた。
「また来年…な」
星夜は抱きしめる腕を放し、織人に軽く口づける
そして星夜は笑顔を見せ、電車へと乗り込んでいく。
するとすぐに発車のベルが鳴り、ドアが閉まるとゆっくりと電車は走り出す。
「……」
織人はその様子を、ずっと黙って見守っていた。
そして星夜の乗った電車が見えなくなるまで、ホームの立っていた。
「行っちゃった…」
織人は下をうつむきながら、階段を下りて駅の方へと戻っていく。
駅の入り口から外を見ると、真っ暗な中に沢山の星が輝いていた。
「また来年…会えるよね…」
自分の右手を胸に当て、小声でそうつぶやく。
その場で織人は顔をあげ、わずかに笑みをこぼす。
「来年…また大好きな星夜に会えるから…」
織人はそう胸に思いながら、星の輝き続ける帰り道を歩いていった。
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