+本当のこと+
Scean5


「ただいま、、、」
返ってくる返事は無く、誰もいない部屋に圭太の声が響く。
「お兄ちゃん、、、帰ってきてるわけ無いよね、、、」
時計はまだ4時くらいをさしており、仕事で忙しい健が帰ってきているわけが無かった。
自分の部屋へ行きランドセルを置くと、そのままベッドに横たわる。
「えっ、、、えっ、、、」
自分のベッドで身体を丸め、再び一人で涙を流す。
自分で自分を抱きしめるように丸まり、ただただ涙を流すだけ、、、
それでも消えない寂しさ、、、
一人になると、否が応でも寂しいと思ってしまう。
自分はひとりぼっちなんだと、、、誰も自分の側にはいてくれないんだと、、、
本当は寂しいという思いを誰かに解ってもらいたくて仕方ないのに、、、
『プルルルル、、、プルルルル、、、』
少しすると電話が鳴る。
「あっ、、、電話、、、」
急いで自分の部屋を出ると、涙を拭いながら電話に出る。
お母さんからの電話だった。
「圭ちゃん?元気にしてる。」
「あっ、、、お母さん。うん。元気にしてるよ。」
「ほんと?寂しくない?」
「うん、、、寂しくないよ。だってお兄ちゃんと一緒だし、、、」
『嘘ばっかり、、、本当は寂しくて仕方ないのに、、、』
「そう?健君も最近忙しいみたいだから、、、迷惑とかかけてない?」
「大丈夫だよ。僕我侭言ったりしてないよ。良い子にしてるよ。」
「そう?なら良いんだけど。身体のほうとかは大丈夫?」
「うん、、、平気だよ。」
その後もお母さんは僕の心配ばかりしてくれた。
だから僕も心配をかけちゃいけないって、頑張って元気に振舞ってた。
「それじゃあお母さんまだお仕事があるから、、、」
少し名残惜しそうにお母さんが言っているのが解った。
だからとっさにお母さんに心配をかけちゃいけないって思った。
「僕なら平気だよ!!お兄ちゃんと一緒だし、寂しくなんて全然無いよ!!」
無理をして元気一杯の声で返事をする。
「そう。それを聞いて安心したわ。それじゃあ健君にも宜しく言っておいてね。」
「うん!!じゃあまたね!!お母さん!!」
そう言うと受話器を置く。
「、、、、、、」
嘘ばっかり言ってた、、、本当のことなんてひとつも言えなかった、、、
でもそうしないとお母さん心配しちゃうから、、、
少しくらいは我慢しないといけないよね、、、我侭を言っちゃいけないよね、、、
皆が僕のことを心配してくれるたび、僕が毎回思うこと、、、
自分の中で決められたこと、、、守らなければいけないこと、、、
「お母さんに心配かけちゃいけないもんね、、、」
そうやっていつも自分で納得しようとしてた。
でも、、、


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