+brotherly+
+affection+
会いたい人
今日も授業の終わるチャイムが聞こえる。
「拓斗ー帰ろうぜー」
チャイムの後すぐに、教室中に響くほどの声が聞こえる。
声の主は智樹、俺の親友だ。
身長は俺と同じでそんなに大きくはないが、元気だけは人一倍ある。
「ってかさぁ、もっと小さな声でも良いじゃんか。近くにいんだし」
少しあきれたような表情をしながら返事を返す。
そんな拓斗の言葉とは裏腹に、元気な智樹は声を出し続ける。
「良いじゃん。コレが俺の普通なんだからさ。なっ帰ろうぜ」
「わかったって、ったく…」
口では少しあきれた感じで言うけれど、顔は嬉しそうに笑う。
実際はこうして帰りに誘ってくれることが嬉しかったりする。
智樹はいつも部活をやっているから、
こうして一緒に帰れるのは部活のない月曜だけだった。
それに普段から良く会っている訳でもない。
けれど智樹は親友だから、色々と話したいことがある。
だから一緒に帰るってことは自分にとって凄く嬉しいことなんだ。
「なぁ、早くしろって」
拓斗がカバンに荷物を入れていると、智樹がそれを急かす。
「急いでるって。お前なんでそんなに急いでんだよ。」
少し不思議そうに聞くと、智樹は少し返答に困る。
「やっ、別に急いでる訳じゃないけどさ…」
智樹は周りを見回しながら言う。
「あのさ、そんなキョロキョロしながら言ったって…って…アレ?」
智樹の後ろから誰かが来ているのが見えた。
そう思った瞬間、その来ている人物は智樹に思いっきり後ろから抱きつく。
「わっ!!」
「と〜も〜き〜」
甘えるような声で智樹の名を呼ぶ。
智樹はそれを嫌がるように、身体をばたつかせる。
「ばかっ!!んなとこで抱きつくなって!!」
しかし抱きついてきた相手は智樹よりもひとまわり大きく、
智樹のかなうような相手ではなかった。
「…純哉?」
「よぉっ!!拓斗も久しぶりじゃん」
「そうだね。って、何してんのさ」
そう言う純哉の腕は、智樹をがっちりと捉えて離さない。
智樹は必死にそれを離そうとじたばたと動く。
「は〜な〜せ〜よ〜!!」
「智樹は可愛いもんな〜」
純也はまた少し甘えたような声を出す。
「可愛いもんな〜じゃないって!!」
純也の腕を振り解くと、息を切らせながら智樹は言う。
「あー…苦しかった…ってお前何考えてんだよ!!」
「あん?俺はそんなにしてないぜ?智樹が暴れっからだろ?」
「『暴れっから』じゃねぇって!!」
純也は俺達と同い年だけど、身長も大きいから大人っぽく見える。
けれど行動は…言うまでもなく凄く子供っぽい。
そんなんだから学校の女子からの人気も高いって言われてる。
実際は良く知らないんだけどね。
「んなわけねーって言ってんだろ!!」
「またー、そんなこと言って」
拓斗の目の前ではひたすら言い合いを続ける智樹と純哉がいる。
しかしその言い合いも、ひたすら平行線のようだった。
見てても面白いかなとも思ったが、今日は少し早くに帰りたかった。
少しでも早く家に行きたかった。
「あのさ、俺邪魔だったら一人で帰るけど…」
そう言う拓斗に智樹は慌てて言う。
「邪魔な訳ないって!!拓斗いこっ!!」
智樹は拓斗の腕を掴み、逃げるように教室を後にする。
「わっ、良いのかよ?純哉のこと放っておいて」
「あんなやつのこと気にしないでも良いって」
そのまま学校の校門まで2人して走っていく。
良く聞こえていなかったけど、
先生とかが怒っているような声が少し聞こえたような気がした。