+brotherly+
+affection+
会いたい人


校門を出てからは歩いて家まで帰る。
夕方の5時を過ぎたのにも関わらず、空はまだ明るかった。
学校から家までは大体30分くらい。
その間中ずっと智樹とずっと話していた。
さっきあった純哉のこととか、部活のこととか色々と。
本当にありきたりな会話を続けているけど、
こうして智樹と話が出来ることは嬉しいことだった。
「っと、んじゃ俺こっちだから」
「あっ、うん」
「そだっ、拓弥さんに宜しくな」
「えっあっ…うっ、うん」
つい『拓弥』と言う名前に反応してしまう。
「?そんなに驚くことかよ。んじゃまた明日な」
そう言うと智樹は自分の帰る方向へと歩いていく。
「やっぱ話しているとすぐに時間経っちゃうな」
そんな独り言を言いながら、少し早足で家路につく。
今日はどうしても少し早くに帰りたかった。
久しぶりに兄貴に会えるからだ。
確かに一緒には住んでいるけれど、
俺は昼型で兄貴は完全に夜型だから普段あまり会うことないんだよね…
自分が学校に行ってる間兄貴は寝てて、帰ってくるとバイトに行っててって感じ。
それで寝ている時間にバイトから帰ってくる。
だからあんまり会えないんだ。
そりゃ全然って訳じゃないけど、本当に少しだけだし。
それに週末は泊り込みでバイトやってたらしくて、先週は全然会えなかったんだ。
だから今日は本当に久しぶりに会える…だから早くに帰ってきたかった。
「ただいまー」
元気な声で玄関のドアを開けると、靴を履いて出かけようとする拓弥がいた。
「よっ、おかえりー」
拓斗はいきなり目の前にいる拓弥に少し驚く。
「あ、ただいま…って兄貴、どっか行くの?」
拓弥の格好を見て、どこかに出かけようとしているのが解った。
「うん?あぁちょっとバイト代理で出てくれねーか?って言われてさ」
少し面倒くさそうに拓弥は言う。
「バイトさっきまでやってきたんじゃないの?だったら断れば…」
拓斗は少し小さな声で言うと、拓弥は拓斗の頭をなでながら言う。
「まぁな。普通だったら断るんだけど、
流石にダチが来てくれって言うんじゃ仕方ないって。」
「そうなんだ…」
残念そうに拓斗が言うと、拓弥はそっと拓斗を抱きしめる。
「そんな顔すんなって。すぐ帰ってくっからさ」
久しぶりに感じた温かさ。嬉しさがこみ上げてくる。
頬が少し赤くなり、とても照れ臭い。
「うん…わかった」
その言葉を聞くと、拓弥もまた少し笑う。
「んじゃ行ってくるわ。
母さん今日も出かけてていないから戸締りとか注意しろよ。」
「うん。兄貴も気をつけてね」
そのまま拓斗は拓弥を見送る。
『すぐに帰ってきてくれるよね…』
拓斗は心の中でそうずっと思っていた。


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