+brotherly+
+affection+
秘密
「拓斗待てって」
拓斗は拓弥の言葉に耳を貸すことなく、
少し下をうつむきながら早足で家路を歩く。
後ろからは拓弥が拓斗の名前を呼びながらやってくる。
「なぁ、何怒ってんだよ」
拓弥は拓斗の前に来て、うつむいた顔を覗き込むようにしながら聞く。
すると拓斗は少し顔をそらしながら言う。
「別に…怒ってないよ…」
「あのさ、どう見たって怒って…っておい!!」
拓斗は少しあきれた表情をする拓弥の横を通り過ぎる。
「ったく…なんだってんだよ」
頭をかきながら、拓弥は少し拓斗と距離をとって家路を歩く。
家からバイト先のコンビニまで大体5分。すぐに家に到着する。
「そうだ。お前学校どうすんだよ?」
家に入るなり、少し心配そうに拓弥が聞く。
考えてみれば一睡もしていないのだから、心配になるのも無理は無い。
「まだ学校まで時間あるし、少し寝てから行くよ」
「大丈夫かよ?」
心配そうな表情が、さっきよりも強くなる。
そんな拓弥の顔に、拓斗は心配させまいと元気な表情を見せる。
「平気だよ。結構寝ないのとか慣れてるし」
「そうか?なら良いんだけど…」
「そういう兄貴はどうすんの?」
今度は拓斗が心配そうに聞き返す。
「俺?俺は今から寝て、昼間からのバイトに備えるだけー」
当たり前のように言う拓弥だが、拓斗はバイトばかりな拓弥が少し心配だった。
特に最近はバイトづくめで、働きまくっているし…
「またバイト?」
さっき以上に心配な表情を見せる。
すると拓弥もまた拓斗を心配しないように、笑いながら言う。
「そ。まぁそれが俺のライフスタイルだからさ」
拓弥がそう言うと拓斗の顔からも笑顔がこぼれてくる。
「やっと笑ったし」
拓弥の言う言葉に、さっきまでの自分の拓弥に対する態度のことが頭をよぎる。
「あ、その、さっきはゴメン…その、そっけない返事とかばっかで…」
顔を少し下げながら、小さな声で拓斗は言う。
「あぁ、そんなの気にしなくても良いって。んじゃおやすみ。ガッコ気をつけてな」
そう言うと拓弥は拓斗のおでこに、唇が触れる程度のキスをする。
「うん。おやすみ…」
そう言うと拓弥は自分の部屋へと向かう。
拓斗も自分の部屋へと向かい、倒れ込むようにベッドに横になる。