+brotherly+
+affection+
秘密


学校の屋上は人がいない。
いないと言うか、一応は立ち入り禁止になっているからだ。
それでも屋上に入るのは簡単で、横の窓を開ければすぐに入ることが出来る。
この学校に入った時、兄貴に『穴場』って教えてもらったんだよね。
それ以来大体の休み時間は此処にいることが多い。
誰も来ることが無いし、本当にゆっくり出来る空間だからだ。
特に昼はこうして智樹と一緒に昼飯を食べながら、2人だけで話したり出来る。
だからこの場所は誰にも教えたくない場所だった。
「よっと。ん〜、今日もいい天気だな」
窓から屋上に入ると、智樹は大きく背を伸ばす。
そして適当な場所に座ると、さっき智樹のくれたパンと牛乳を食べる。
「そういえばお前のクラスの奴が言ってたんだけどさ、
今日午前中ずっと寝てたんだって?」
「うん。そうみたいだね」
「そうみたいだねって…」
智樹はまたあきれた表情を返す。
確かにあきれた表情をするのも無理は無いと思う。
それは自分自身も寝ていることに全く気がつかなかったせいだ。
「寝る気は全然無かったんだけどね。気がついたら寝てたって感じかな?」
「なんだよ、それ」
あきれる智樹の言葉に、拓斗は笑いながら返事をする。
だけど余りにも授業中寝ていたということを、多くの連中から言われたのだろう。
「あのさ、昨日なんかあったのか?」
智樹のあきれた表情が、心配の表情に変わっていく。
拓斗はそんな智樹の表情見るなり、慌てて否定する。
「あ、別になんかあった訳じゃなくて、ただちょっと寝付けなかっただけだよ」
そう言うと持っていたパンを自分の口に運ぶ。
「そうか?なら良いんだけど…」
智樹はホッとしたように安堵の表情を見せる。
流石に『兄貴に会いたくて寝られなかった』とは言えなかった。
そう思ったとき、朝ずっと考えつづけていたことが再び頭の中をよぎる。
『だけど智樹には…』
「おーい…拓斗ー?」
うっすらと智樹の声が聞こえてくる。
「えっ!?あっ、ごっゴメン!!」
「お前パンくわえたまま止まったからどうしたのかと思った。
ってかさっきからおかしいぞ?どうかしたのか?」
「ちょっ…ちょっと考えごとしてたんで…」
また心配そうに聞いてくる智樹に、拓斗も再び慌てて返事をする。
それでも智樹の心配の表情は消えない。
流石に2回もおかしなことが続けば、そうなるのも無理はない。


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