+brotherly+
+affection+
秘密
「そっそうだ!!智樹には好きな人とかいる?」
拓斗はなるべくこの話題からそらそうと、思いついたことを言ってみる。
ありきたりなことだとは思ったけど、焦る拓斗にはそれしか思い浮かばなかった。
「は?なんだよいきなり」
「だから、その、智樹は好きな人とかいるのかなー?って思ったから」
慌てて言ったせいか、どことなく落ち着かない。
「そう言うお前こそ好きな奴とかいるのかよ」
「えっ…」
逆に質問されて、さらに動揺してしまう。
「えっあっそのっ…えと…」
流石に自分には好きな人がいるとは言えない。
だけどその動揺はあっさりと智樹に見破られる。
「そっかー、拓斗には好きな奴がいるんだー」
にやにやしながら智樹が言う。
「うっ、うるさいな。俺は智樹にいるかどうかが聞きたいんだよ」
むきになって聞き返す拓斗に、智樹は少し考えながら言う。
「そうだな…あえて言えば拓弥さんとか…かな?」
「えっ!?」
「あっ、別に変な意味でとかじゃない…と思う。
その…自信ないんだけど、好きなんだよな。拓弥さんのこと」
「あ、そう…なんだ…」
どう返事を返していいのかが解らない。
「あ、お前このこと皆にもだけど、拓弥さんに絶対言うなよ!!」
いつもよりも念を押しながら智樹が言う。
「…うん。解った」
拓斗は少し頭を下げ、小さな声で返す。言えるわけないないと思った。
智樹はそれに気づかず、その場から立ち上がる。
「さてと俺そろそろ部活の集まりがあ…」
拓斗の方を向き話していると、その途中で大きな音と共に話し声が途切れる。
「とーもきー!!」
昨日と同じ、元気で甘えるような声が聞こえてくる。
すぐに純哉だと解った。
「わぁぁぁ!!なっなんだよお前っ!!」
「だって部活の集まりがあるから一緒に行こうと思ったのに、
智樹どこ探しても智樹いねーんだもん。
んでクラスの奴に聞いたら此処じゃないかって言ってたからさ」
純哉は智樹を後ろから抱き、嬉しそうに笑いながら言う。
「探さなくて良いって!!ったく!!」
そんな2人を見て、拓斗はさっきのことを忘れたかのように笑う。
「ははっ、仲良いね」
「だろー」
そう言う拓斗と純哉に、智樹は少しにらみつけ、ムキになって否定する。
「仲良いわけ無いって!!」
「はははっ、解ってるって」
それでも拓斗の顔は笑っていた。
「ったくお前までなんなんだよ」
不満そうな表情する智樹だったが、すぐにそれを忘れたかのように焦りだす。
「やべっ、急がないと」
「なんかあんの?」
「聡史先輩から部員全員、昼休みに集まるように言われててさ…
急がないとな。んじゃまたな、拓斗」
そう言うと智樹は拓斗に手を振りながら、急いでその場を後にする。
「またな拓斗。って智樹待てよ」
純哉もまたそれを追うように走っていった。