+brotherly+
+affection+
自分の気持ち


時が経つにつれて、外の雨が激しくなっていくのが解る。
そして部屋もだんだんと暗くなっていった。
部屋の明かりはつくことがなく、2人はただずっとベッドの上で座り続けていた。
「…俺のせいでもあるんだよな…」
沈黙を破って、拓弥がそう話し出す。
「えっ…」
今までまともに反応をしなかった拓斗が、拓弥の言葉に強く反応をする。
「俺がお前に、人のいるような場所でキスしたから…」
あの時自分が拓斗にキスしていなかったら、
きっとこんなことにはならなかった…
拓弥は無言の間中、そのことをずっと後悔していた。
「そんなこと…ないよ…兄貴のせいじゃないよ…」
下をうつむいたまま、拓斗は小声で話す。
「けど、俺が調子乗ってあんなことしなきゃ…」
「…兄貴は、何も悪くないよ…全部俺が悪いんだよ…」
「拓斗…」
自分を責める拓斗に、拓弥はかけてやれる言葉が見つからない。
「俺、本当は嬉しかった。全然嫌じゃなかった。
兄貴に会った時とか、外で…キス…したこととか…
本当に…恋人みたいだな…って…」
「……」
震える声だが、はっきりとした口調で拓斗は話す。
そんな拓斗に、拓弥は自分の顔をしっかりと拓斗の方に向けながら話を聞いていた。
「でも…俺、智樹のことも知ってた…智樹が、兄貴のこと好きだって…」
「えっ…」
智樹も自分のことを好きと言われ、拓弥は少し驚いた表情をする。
「今日学校で話したんだ…好きな人のこと…俺ちゃんと言えなかったけど…
でも智樹そう言ってたんだ…兄貴のこと…好き…だって」
『好き』というその一言を言おうとした時だけ、声の震えが強くなる。
「そっか…そうなんだ…」
拓弥は智樹が自分のことを好きだということを受け止め、
そう返事を返す。
「本当は俺、智樹に話したかった。俺兄貴のことが好きだって…
兄弟だからとかそんなんじゃなくて、兄貴が大好きだって…」
「……」
拓弥は再び、無言で拓斗の言葉に耳を傾けている。
「今日の朝コンビニに行ったとき、
玲於奈さんに普通に俺達のこと話してたよね?」
「あぁ…レオの奴は全部知ってるからな…」
「それ見て俺、凄く羨ましくなって…俺も、智樹だったらって思ったんだ。」
「…そっか…やっぱ、隠してるの辛かったんだ…」
拓斗は、拓弥が欲しい言葉をかけてくれることが嬉しかった。
親友に隠していること…それは本当に辛かったから…
その言葉に安心して、拓斗は続けて話し続ける。
「うん…それで俺、今日言おうと思ったんだ。
けど智樹が兄貴のこと好きだって聞いたら、
余計言えなくなって…それに智樹と一緒にいるの、辛くなって…」
拓斗の声は震えが強くなり、まるで泣き出す寸前のような声で話す。
「拓斗…」
「だから俺、こんなことで智樹に知られたくなかった…
もっとちゃんと…ちゃんと言いたかった…こんなことで…俺…智樹のこと…」
下にうつむいた拓斗の顔の辺りから、ぽろぽろと水が落ちていくのが見える。
雨の水ではない、涙がこぼれ落ちだしていた。
「拓斗…」
「俺っ…俺っ…ひっ…っく、えっ…」
流れ出した涙は、止まることなく流れ続ける。
拓弥は雨で濡れたままの拓斗の身体を、自分の身体へと寄せる。
「拓斗…」
「ひっえっ…あに…き…あにきぃ…」
冷たい水でいっぱいの全身の中に、かすかに感じる体温。
とても優しくて、温かい…
だんだんと自分の心が落ち着いていくのが解る。
「大丈夫だよ…」
拓弥にはそういうことしか出来ない。
けれどその一言が、拓斗にはとても嬉しかった。


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