+会えてよかった+
一話


「そういう訳だから…何か必要なものがあれば明日にでも持ってくるんだけど…」
先程ナースステーションであった話を適当にまとめ、太陽は母親に説明する。
「そうなの…とりあえず必要なものについては、紙にでも書いておいた方がいいわね」
そういうと母親は近くにあったメモ帳とシャープペンを取り出して、頭で必要なものを思い出しながら書き出していく。
「んじゃぁ、俺も入院手続きの為に必要な書類とか、受付で貰ってくるよ」
「あ、お願いね。戻ってくるまでには、書いておくから」
「別に急がなくても大丈夫だって。んじゃ行って来るよ」
太陽は再び病室を後にして、今度はナースステーションとは逆の方向へと足を向ける。
そして長い廊下と階段を使い、病院のロビーまでやってくる。
「うわー…すげー人だな…」
ロビーには診察が終わり、料金の支払いをする人や、薬を受け取ろうと待っている人達でいっぱいだった。
「えっと…受付はー…あ、あそこか」
太陽は人ゴミの後ろから辺りを見回して、窓口の上に書かれている『受付』の文字を見つける。
午後と言うことも関係してか、受付窓口にいる患者は全くと言っていいほどいなかった。
「あの…入院手続きの書類を頂きたいんですが…」
窓口に到着すると、太陽は窓口に座っていた女性にそう声をかける。
すると女性は笑顔で返事をして、机の下に置いてあったいくつかの書類を目の前に出す。
「こちらが入院の手続き書類になりますね」
女性は書類を開き、書き方等を丁寧に説明してくれる。
「こちらに患者さんのお名前と、ご印鑑……」
ぱっと見れば何をどう書けば良いのかは解るのだが、それでも女性は丁寧に説明してくれる。
流石にそれを断るわけにもいかず、太陽はその話を真面目に聞いていた。
「解りました。とりあえずこの書類を書いて、印鑑、保険証と一緒に出せば良いんですね」
太陽が確認の為に質問をすると、女性は再び笑顔で応えてくれる。
「そうですね。それとこちらは注意事項になります。必ず目を通すようにして下さいね」
女性は書類の他に、薄い本を取り出して太陽へと手渡す。
「ありがとうございました。それじゃあ…」
「お大事に」
女性は病院での決まり文句のような言葉を言って、太陽を見送る。
「さてと…とりあえずこの書類を書けば良いんだよな…」
太陽はロビーに設置されている椅子に座り、手渡された書類を開いて何が必要であるのかを再び確認する。
「っと…とりあえず書類の方は母さんに書いてもらえば良いか。よしっ」
再び病室の方に戻ろうと立ち上がって階段へと向かおうとした時、先程見つけた少年の姿がそこにあった。


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