+会えてよかった+
四話


「っと…ついたついた…」
太陽は見慣れた場所にたどり着くと、そのまま母親のいる病室へと向かう。
病室は明かりこそ灯っているが、どのベッドもカーテンで仕切られていて、もう寝る準備をしている人ばかりだった。
「…母さん?」
母親の場所も既にカーテンで仕切られていて、太陽はそのカーテンを開いて中へと入っていく。
「……」
太陽が声をかけても、反応は何もない。
「寝ちゃってるのかな?」
そういってベッドの上に顔を向けると、寝息を立てる母親の姿があった。
「…寝ちゃってるんじゃ、しょうがないか」
太陽は持ってきた荷物を母親が起きてすぐ解るよう、面会者用の椅子の上に置く。
「んじゃおやすみ、母さん」
出来るだけ音を立てないように、太陽はその場を後にする。
静かに病室を後にして、太陽は再び誰もいない病棟の廊下に立つ。
「えっと…どうすっかなぁ…」
太陽はその場で腕を組み、時々自分の時計に目を向けながら何かを考え始める。
「…尚希、まだ起きてるかな?」
太陽は尚希に会いたかったけれど、こんな遅くに行くのはどうかと思う。
だから自分を納得させるだけの理由を、ずっと考えていた。
「…まだ消灯時間前だし、顔出すだけだしな…全然大丈夫だよな…うん」
自分で自分を納得させながら、太陽は一人寒い廊下で口を開く。
「良しっ…行くか」
少しだけ勢いをつけるような声を出して、太陽は嬉しそうに尚希の病室へと足を運ぶ。


[1]Scean4
[2]+Back+