+会えてよかった+
五話
「尚希…大丈夫か?」
「ぅん…少し、痛いけど…」
尚希は新しいパジャマに着替えてベッドの上に横たわり、太陽はその横で見守っていた。
「そっか…」
太陽は尚希の返事に安堵の表情を見せ、ゆっくりと尚希の顔へと自分の手を持っていく。
そしてまだ赤みの残る頬に触れ、尚希の体温をその手に感じ取る。
「……なぁ、尚希」
「何…太陽さん」
「その…今度の日曜さ、バイト休みなんだ…だからもし良かったら、どこか2人で行かないか?」
太陽は少しだけ照れるような表情をしながら、尚希にそう言う。
「えっ…」
「先生も言ってただろ…療養の為に、少しくらい外出した方が良いって…それに」
確かに医師と尚希との会話のこともあるが、何よりも自分がそうしたかった。
尚希と2人で、どこかに遊びにいけたら…そう思っていた。
「病院の裏に公園があるみたいだからさ、もし良かったらって思ったんだけど…」
尚希の返事をうかがいながら太陽が話していると、尚希は嬉しそうな表情をしながら返事を返してきた。
「うんっ…僕も、太陽さんと一緒なら行きたいな…」
「そっか! じゃあ今度の日曜日な。あ、俺できるだけ早く来るからさ!」
そんな明るい尚希の返事に、太陽の表情も明るく、そして嬉しそうになっていく。
「うんっ」
尚希もそんな太陽の表情につられるように、笑顔を見せていた。
「あ…太陽さん。またお願い…言っても良いかな?」
少しして、尚希は恥ずかしそうに口を開く。
「ん? なんだよ…」
「手を…握っててくれないかな…」
「…解ったよ」
太陽は尚希の言葉に小さく笑顔を見せ、左手を握ってやる。
「ありがとう…太陽さん」
「気にするなって…」
もう言い慣れてしまうほどの言葉を口にして、太陽は尚希の左手をしっかり握り締めてやる。
尚希が朝目覚めるまで…ずっと握り締めてやっていた。