+会えてよかった+
五話
太陽は尚希の肩に手を置いて、力を抜いた尚希の全身を支えるようにする。
「…尚希」
そして少しだけ身体を離して、尚希の顔を見ようと自分の顔を少しだけ動かしていく。
「太陽…さん…」
今までにない近い距離に、尚希の顔が近くにある。
頬は赤く染まり、白い肌のせいでそれがとても良く解る。
「顔…赤いな…」
太陽が尚希の表情を見ながらそうつぶやくと、尚希はそっと少しだけ顔を横に背けてしまう。
「…恥ずかしい、から…太陽さん、凄く近くにいるから…」
ポーっとした表情で横を向いたまま、尚希はそう言う。
「俺も…ちょっと恥ずかしいな…」
太陽は少しだけにやけるような表情をしながら、そう口を開く。
それでも密着した身体は離れることがなく、全身に感じる相手の体温が恥ずかしさを助長させていた。
「…なぁ、尚希。キス…しても良いか」
それでもこうして、身体を寄せ合って抱き合う以上に、尚希の近くに行きたい…尚希の側に行きたい…
どんなに恥ずかしくてもその思いは止まることがなく、もっともっと相手のことを知りたいと思ってしまう。
「…ぅん…」
尚希は横を向いたまま、恥ずかしそうに顔を真っ赤にしながら小さく返事をする。
その返事に太陽は慣れない手つきで尚希の頬に手を触れ、自分の口元へと尚希の口を運んでいく。
「ぅ…んんっ…ん…」
深夜の病室に、尚希の声が響く。
「…尚希」
全身の神経が、口元に集中していく。
自分の身体に尚希を抱きしめている感覚すらも、忘れてしまいそうだった。
「んっ…ふっ…あ…たいよ、さん…」
太陽は尚希の唇に自分の唇を合わせ、ゆっくりと口の中へと自分を入れていく。
全身の力を完全に抜いていた尚希の口元は、あっさりと太陽を受け入れていた。
抱き合っていた時以上に、尚希の温かさが全身に伝わってくるような感じがする。
「尚希…」
時々口を離して尚希の名前を呼び、再び深い口づけを交わす。
お互いの口の中で絡み合う唾液が、静かな病室にクチュクチュと小さく音を立てていた。