+会えてよかった+
六話
「えーっと…なんか落ち着かないな…」
まだ朝の早い時間に、太陽は病棟への廊下を歩いていた。
今までにこんな朝早くに病棟へ来たことがないこともあってか、まるで知らない場所を歩いているような気持ちになる。
「やっぱ…結構入院してる人っているんだな…」
廊下には入院患者と思われるような人物が、所狭しといる。
他の入院患者と会話を交わす人、一人で本を読む人…
今までは夜にしか来たことがない太陽には、別世界にいるように思えた。
「えっと…こっちだな」
道は解っているはずなのに、確認するよう時々看板に目を向けながら歩く。
「…時間早すぎたりしなかったかな…」
そう言って自分の身につけている腕時計に目を向けると、AM9:00を表示している。
「…もっと遅い方が良かったかな…」
太陽は足取りを少し遅くしながら、考え込んでしまう。
尚希と約束の時間は決めていないし、いつもより早く来れるとだけ言ってある。
けど自分がこの場所に来るのは、夕方を過ぎてから…そのことを考えると、早すぎるようにも感じられた。
「でもま…良いか」
それでも自分は、尚希に早く会いたいから…少しでも長く、尚希と共有できる時間を過ごしたかったから…1分でも1秒でも長く、一緒にいたいと思ったから。
太陽は自分を納得させるようにそう言うと、にやけた表情を浮かべながら病棟の方へと歩いていく。
今日は何をしよう…何をすれば、尚希は喜んでくれるだろう…
そのことを延々と考えながら、病院の廊下を歩いていた。