+Love You+
一話/約束
Scean3


「ん…あっ」
友紀哉は壁際に聞こえてくる音に気がつき、その場に立ち上がる。
ほぼ同時にドアが開き、そこには将幸の姿があった。
「えーっと…いたいた。わりぃな、遅くなっちまって」
将幸はその場で顔をキョロキョロと動かして、屋上を見回す。
そして友紀哉の姿を見つけると、その方向へと向かいながらそう口にする。
「あ、いや…別にそんなに待ってないし…」
将幸の方を見て話そうとは思うものの、どうしても見ることが出来ず、友紀哉は顔を横に背けながら口を開いていた。
「そっか…それで? 俺に用ってなんなんだよ」
友紀哉の返事を軽く流すと、どのような用件かはだいたい解っているにも関わらず質問する。
「え、あ…その…」
しかし友紀哉はその肝心の用件のことを口にしようとするが、言葉が出てきてくれない。
何を言おうとしていたのかは散々に考えていたにも関わらず、将幸本人を前にして友紀哉は完全に混乱してしまっていた。
「…なんだよ」
それでも将幸は友紀哉が話すのを待っていたが、その声はどことなく苛立ちを感じさせるものだった。
「だから…その、えっと…」
将幸の苛立ちを僅かに感じて友紀哉は焦り始めるが、言いたい言葉は何一つ頭に浮かんでこない。
「……」
「だから…あの」
似たような単語を繰り返し、やがて顔も下に向けてしまう。
「…チッ」
この場所に来てから数分と経っていないにも関わらず、将幸は苛立ちを目に見えて解るほどに出し始める。
無駄な時間を過ごされることにもムカついていたが、それよりも全く話す気配のない友紀哉のことを見ていてイライラしていた。
「だーかーらー…なんだってんだよ!! 俺も暇じゃないんだ、用ないなら帰るぞ?!」
短気な将幸は結局その苛立ちを押し込めることが出来ずに、大きな声と共に噴出させてしまう。
そして今まで友紀哉の方を向いていた身体を反対側に向けて、屋上を後にしようとする。
「あっ…まっ、待ってよ!」
しかし友紀哉はそんな将幸のことを、今までにない大きな声で呼び止める。
その声に気がついて将幸は、顔だけを友紀哉の方に向ける。
表情は至って普通のように見えるが、感じるものは非常に冷たい。
「だからなんだってんだよ! 言いたいことあんなら、はっきり言えよな!」
「あっ、う…あ、だからっ! そのっ…」
将幸の声には明らかなまでな怒りに満ちていて、友紀哉は完全に威圧されてしまう。
驚きと怯えで身体は完全に強張ってしまい、完全にパニックになる。
「…だからなんなんだよっ!!」
「だっ、だからそのっ…僕…将幸君のこと…好きで…」
収まることのない将幸の罵声は、友紀哉の心に秘める言葉を無理やり引き出す。
怯えているのか、力のない友紀哉の小さな声はとても震えていた。
「…ふーん…それで?」
友紀哉の返事を聞くと、将幸の声はいつもと変わらないものへと戻る。
その声に安心したのか、友紀哉は顔を上げ安堵の表情を浮かべる。
「えっ…それでって…その、それだけで…」
ただ今度は、将幸の言ってきた言葉に困惑の表情を見せ始める。
もともと好きと言うことしか頭になかった友紀哉には、それ以上のことなど考えてはいなかった。
「……」
「だから…好きって…だけで」
将幸は友紀哉の困惑する姿を見てにやけながら、その身体を再び友紀哉のいる方に向ける。
そして自分の身体を、ゆっくりと友紀哉の方へと近づけていく。
「…そうか…じゃあ俺と、こういうことしたい訳だ…」
友紀哉の前まで自分の身体を持ってくると、将幸は自分の身体を更に近づけてすり寄せる。
「えっ…将幸くっ…!」
温かな体温を学生服越しに感じた瞬間、友紀哉の全身に一瞬だけピリッとしたものを感じる。
それはやがて気持ちよさに変わり、熱い吐息を嫌でも漏らさせる。
「俺と…セックスしたいんだろ?」
将幸の右手は、友紀哉の下半身をしっかりとつかんでいた。
服越しに感じる膨らみを握り、それを撫で回すように愛撫する。
「ちがっ…そんな訳じゃ…はぁっ」
それを否定しようとするものの、友紀哉は吐息と共に身体の一部が大きくなっていく。
「へぇー…お前って感じやすいんだな」
将幸はそんな友紀哉のことをからかうような声で言いながら、右手をそのままにしてその場でしゃがみ込む。
「なっ…なにすっ…あっ!」
友紀哉が何をされるのかと思った瞬間に、将幸の左手が自分のズボンを勢いよく脱がせる。
下着も一緒に脱がされてしまい、大きくなったペニスがその姿をはっきりと現す。
「…結構大きいじゃん…」


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