+Love You+
二話/強制


「はぁ? んだよ、それ」
昼休みの真っ只中、人でごった返している学校の食堂で、将幸は目の前に居る敦に向かってそう口を開く。
「だからー…なんか最近闇討ちっつーの? 呼び出されて、いきなりボッコにされるってことが、最近あるらしいって話」
将幸の声に、敦は繰り返すような口調で言う。
「ってか、今時闇討ちってなんなんだよ…」
敦の言う言葉を半信半疑に受け止めながら、将幸は目の前にある自分の頼んだラーメンをすする。
不味いと思う食べ物でも、空腹の身体はそれを無意識に口へと運んでいた。
「まぁ、そりゃそうだけどな。けどそれだけじゃないっつーか、なんつーか…」
将幸の言葉に、敦は何かを隠しているような声を出す。
同時にその声は、明らかなまでに隠していることを言いたいという気持ちが感じられた。
「…早く言えって」
そんな敦の声に少しの苛立ちを感じながら、将幸は再びラーメンをすする。
「そう急かすなって。えっと…あった」
将幸の言葉を聞くと少しだけ嬉しそうに返事を返すと、敦は上着のポケットの中から一枚の紙を取り出す。
「なんだ? それ」
敦の取り出した紙を不思議そうに見つめていると、敦はその紙を開いて机の上に置く。
B5サイズほどのOA用紙には、敦が手書きで書いた文字が並べられていた。
「これな、その闇討ちにあったって言う奴のリスト。良く見てみ」
「ふーん…」
将幸は敦が机の上に出した紙を手に取ると、目の前へと持ってきて見る。
そこには確かに人の名前が、10人ほど並べられていた。
「…あれっ…こいつらって…」
そしてその並べられている名前を読んでいくと、どれも見覚えや聞き覚えのある名前ばかりが並んでいた。
「そっ…ぜーんぶお前と関係持った奴らな訳よ」
「…だよな」
その紙に書かれていた名前の全ては、自分と身体の関係を持った人ばかりだった。
何回も関係を持ったことのある奴もいれば、一回きりだった人物もいる。
もちろんその全てを将幸が覚えている訳ではないが、少なからずこの学校で関係を持った人物のことは、うろ覚えながらも頭の中に入っていた。
「で…俺が言いたいのはー…」
将幸が紙に書かれていた人物のことに気がつくと、敦はわざと将幸のことをいらつかせるように、いつもより遅い口調で言う。
「…要はこの事件が、俺と関わりあるんじゃねーってこったろ?」
「えぅっ…そ、そうだけど…言うなよな」
自分が言おうとしたことを先に言われてしまったことに、敦はその場で肩を落としてしまう。
「ばっかじゃねーの? んなの偶然だよ偶然…」
すると将幸はそう言って、ラーメンの器を持って不味いスープを飲んでいく。
「でも、無関係とも言えねーだろ? いくらなんでも、全員がお前と関わりあるってさ…おかしくねー?」
「…まぁ、確かにな…」
偶然だとは思っても、敦の言うことも間違いないと思う。
1人や2人の話ならば、偶然で片付けることができる。
けれど今回の事件は被害者が既に10人を超えていて、自分に関係がないとは考えにくいことも確かだった。
「まっ…そのうちお前のトコに来るかも知れないから、気をつけろって話しだな」
敦はそう言うと、目の前にある不味い炒飯を一気に口へと運んでいく。
「…アホくさ。それに俺んとこきやがったら、逆にブン殴ってやるっつーの」
そう言って将幸は手に持っていた紙を丸めると、中身のなくなったラーメンの器へと入れる。
「あははっ、そりゃ言えてるわ」
将幸の言葉に、敦は笑いながら返事をしていた。


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