+Love You+
二話/強制


「あー…マジー飯だな、ホント」
学食の愚痴をこぼしながら、将幸は敦と一緒に教室へと向かっていた。
「まぁ…安いだけマシってことにしてやれよ」
敦は将幸の中にある小さな苛立ちをなだめるように、小さく笑いながら言う。
「そりゃ解ってるけどさ…俺ら育ち盛りだぞ? もっと美味いもん食わせろっつーの」
絶え間なく続く愚痴を口にしながら、教室へと向かっていた。
そして暫くすると、目の前に見たことのある人の姿が見えてくる。
「あれ…あいつって確か…」
「唯っ」
将幸が誰であるかを思い出そうとしていると、隣に居た敦が大きな声でそう言いながら、突然走り出してその人物のもとへと向かう。
「ちょ、ちょと待てって」
そんな敦の後を追うように、将幸も唯と呼ばれた少年のもとへと向かっていた。
「あ…敦さん…こんにちは」
唯は敦のもとへとやってくると、礼儀正しく会釈をしながら言ってくる。
背丈は将幸や敦よりもずっと小さく、高校生だとは思えない。
「どうしたんだ? 俺のクラスまで来たりして…」
敦の表情は急に優しそうになり、心配するような声を出す。
「う、うん…ちょっと、託を頼まれて…あ、こんにちは…将幸さん」
敦の言葉に返事を返しながら、その後ろに居た将幸にも挨拶をする。
けれどその声はとてもおどおどしていて、目に見えて怯えているのが解った。
「ちっす…んーっと、俺いると邪魔みたいだから、先行くわ」
将幸も自分が唯に怖がられているのが解っているのか、そう言うと一足先に教室の中へと入っていく。
「わりーな、将幸」
敦の声に右手を挙げると、将幸は自分の机へと向かう。
「ったく、あいつも物好きだよな…なんであんなちっこい奴好きになったりするんだか…」
敦が唯と付き合っていることは、聞いたことがなくても目に見えて解る。
唯に対する敦の表情、声、態度…全てに自分とは違う接し方をしているからだった。
「はぁ…ばっかみてぇ…」
廊下に目を向けると、敦は唯と何かを話している。
「…恋人…ねぇ…」
遠目に見る2人の姿に、少しだけ羨ましさを感じる自分が居た。
無差別かつ大勢の人物と肉体関係を持つことには、はっきり言って自分が気持良いから全然構わないと思う。
それでも目に映る2人のように、ほほえましいような姿を見ると、寂しくなるような気がした。
「…うざってー」
そう口にすると、将幸は自分の顔を廊下から逆にある窓へと向けていた。


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