+Love You+
三話/愛した人
剛とは将幸がこの学校に来た時からの知り合いで、セックスフレンドの一人でもある。
ただ他のセフレと違っていたのは、肉体関係が他の誰よりも長く続いているということと、将幸の方からアプローチをかけてなったというところがあった。
それは1つ年上の剛は将幸が学校に来たときから最も権力があり、それに従う形で学校内での地位を確立したいと思ったからだった。
「…ちぇっ」
しかし最初は自分の権威の為だけに剛に抱かれていたはずなのに、今では別の思いが将幸の中へと生まれていた。
「……」
時が経つに連れ、剛に対して将幸は恋愛感情を持つようになっていた。
初めの頃は他の人間よりも回数を重ねただけであって、単なる気の迷いのせいだと思おうとはした。
けれどそれだけでは説明しきれないほどの想いにもかられるようになり、いつ何時も剛への気持ちばかりが募る。
気がつけば相手を考え、どうしてもその相手の気を惹きたくなる。
「……放課後、だよな…」
今までの自分では、考えられないような気持ちだった。
セフレで構わないはずだと思っても、心はそれ以上を望む…自分のことを何度も助けてくれる剛のことを、身体の関係以上に欲しくなる。
「……」
しかしそれを口に出して言うことなど出来るはずのない将幸は、ただひたすらに想いだけを募らせてしまう。
それに対して、剛は最初の時と変わらない態度でしか自分と接してくれない。
必要な時にしか自分と会ってはくれない剛に対して、将幸は想いと共に苛立ちも募らせる。
剛に相手をして欲しいと思う気持ちと、なかなか会えない苛立ち、そして芽生えてきた恋心への戸惑い。
他の奴らと何か問題を作れば、剛が会ってくれる。
剛が相手にしてくれないから、恋心を忘れられるから、別の人間に相手をしてもらう。
そんな思いが、将幸のことを大多数への肉体関係へと導いていた。
「…行ってみるかな」
将幸は一人で自分のクラスのある教室へと続く廊下を歩きながら、呟くように口を開く。
いつも問題があった場合、剛は伝えた日の放課後に体育倉庫で相手に制裁を与える。
それを知っていた将幸は、その現場へと行こうと考えていた。
別に剛のことである以上、放っておいても解決してくれるとは思ったが、今回は何故だか気になって仕方がなかった。
自分が友紀哉に抱かれたとき、異常な恐怖を感じたからなのかも知れない。
「…あの友紀哉じゃ、剛に敵うわけねぇもんな」
心の中にある僅かな不安を打ち消すようにそう言うと、将幸は自分の教室へと入っていく。
「どこ行ってたんだよ…まぁ、聞かなくてもだいたい解るけどな」
入るとすぐに、敦の声が聞こえてきた。
いつもと変わらない、日常の風景がそこにあった。