+僕のサンタさん+
一時間も経たないうちに、机の上にあった食べ物の殆どが姿を消していた。
「ふぅ…もうお腹いっぱいだな」
「わんー」
健はお腹を抱えて椅子の背中にもたれかかり、ラグナも楽な体勢になろうと机の上で横たわってしまう。
「あー、そんなところで横になったらダメだよ」
そう言うと圭太はラグナの身体を持ち上げて、いつも寝かせている居間へと連れて行こうとする。
「わんわんわん!」
「わわっ、なっなに? 暴れ出したりして…」
ラグナは身体を動かして、圭太の手につかまらないように動き回る。
しかしお腹いっぱいに物を食べたばかりのせいか、その動きはとても鈍いものだった。
「…何か言いたそうだな」
「わんっ!」
健がそう言うと、ラグナはそうだと言うように返事を返してきた。
そして健とラグナのやり取りに、圭太はあることを思い出す。
「ラグナ…ひょっとしてケーキのこと?」
「わんわんっ」
その言葉に、ラグナは嬉しそうに鳴き声をあげる。
「ケーキ? あぁ…昼にメールをくれた、あのケーキのことか」
健は圭太が自分に送ってくれた、メールのことを思い出しながら言う。
「うん…でも食べたばっかりだから、後にしようと思って…」
「わんわんっ」
その言葉にラグナは、まるでせかすような鳴き声をあげる。
「ラグナ…まだ食べるの?」
あきれたような表情をする圭太に、健は少しだけ笑顔を見せる。
「ははは、良いじゃないか。それに俺も見てみたいな…圭太が作ってくれたケーキ」
すると圭太は健の方に顔を向けて、嬉しそうな表情で返事を返す。
「本当に!」
「あぁ…メールで見た時から、ずっと気になってたからな…」
健の表情は、本当に楽しみにしているようだった。
「うんっ! じゃあすぐに持ってくるね」
そんな健の表情に、圭太は急いでケーキの置いてある居間の方へと向かっていった。
「わんわんっ」
「ラグナ…もう少し落ち着きなさい」
「くうん? わんわんっ」
健がそう言うと、まるで同じ言葉を言い返してくるような返事をラグナは返してきた。
「…俺も、落ち着いた方が良いのか…」
小さく笑いながら、健はラグナの頭を撫でてやる。
健も自分の気持ちが、いつもより少しだけ高ぶっているような気がしていた。
圭太が自分を喜ばせる為に、頑張ってケーキを作ってくれたこと…昼間にメールを見たときから、ずっと嬉しさがこみ上げてきていた。
もちろんケーキを作ってくれたことが嬉しいとも思っているが、それ以上に自分の為に何かをしてくれようとする圭太の気持ちが嬉しかった。