+僕のサンタさん+


「お待たせー」
少しすると、圭太は大きめの皿に乗せたケーキを運んでくる。
メールで見たケーキと同じで、上にはキレイな装飾が施されていた。
「えへへ…凄いでしょ」
圭太は少しだけ照れるようにそう言いながら、ケーキを台所の机の上に持って行こうとする。
しかし居間と台所の境目に差し掛かったところで、圭太は小さな出っ張りに足をひっかけてしまう。
「えっ…わぁぁっ」
「圭太っ、危ないっ!」
健はつまづいて転びそうになる圭太のことを支えようと、その場から慌てて走り出す。
「わっ…」
間一髪のところで、健は圭太のことを抱きとめるようにしていた。
しかしその瞬間に、ガラスが割れるような音が部屋に響き渡る。
「あっ…ケーキが!」
そういう圭太の目の前には、見るも無残な姿になったケーキの姿があった。
乗せていた皿は割れ、ケーキの形は全く原型をとどめていない。
圭太はそれを目にすると、自分の身体を支えてくれた健の身体から慌てて離れ、ケーキを落とした場所へと走る。
「ケーキが…せっかく作ったケーキ…」
圭太はそのケーキを拾おうと、ぐちゃぐちゃになった物に手を触れる。
「いたっ…」
しかし割れたガラスの破片とケーキが混ざり合ってしまったのか、圭太は指を切ってしまう。
「圭太…大丈夫か?」
健は急いで圭太のもとへと向かい、切った指先を確認するように見る。
「お兄ちゃん…」
圭太の目は、今にも泣き出しそうなほど潤んでいた。
「とにかく、傷の手当てをしないと…」
健がそう言うと、圭太はその場で大きな声を出して泣き出してしまう。
「わぁぁぁぁぁん!! ぼくっ…ぼくっ!」
「…圭太」
「ぼくっ…おにいちゃんの為に、一生懸命作ったのに…」
一生懸命になって作ったケーキ…健に喜んで欲しいと思って、頑張って作ったのに…
「圭太…俺はその気持ちだけで十分だから…」
健はその場でしゃがみ込むと、圭太の頭を優しくなでながらそう言う。
「でもっ…でもぼくっ…」
しかし圭太の両腕は、目元から離れることはなかった。
「圭太…」
「僕お兄ちゃんに、いつもしてもらってばかりだから…だからぼくっ」
大好きな健に喜んでもらう為に、一生懸命になって作ったケーキ…それなのに、それを自分で壊してしまったことが悔しくて、悲しかった。
「圭太…その気持ちだけで嬉しいから…だからもう泣くんじゃない」
健は泣きじゃくる圭太のことを抱きしめ、背中を軽く叩きながら言う。
「…お兄ちゃん、ごめんなさい…ぼくっ…」
「謝ることなんてないから…圭太の気持ちは、十分解ってるから…」
圭太の言葉に、健は笑顔でそう返事を返す。
「でも…」
「大丈夫だよ…だからもう泣くんじゃない…」
「わんー…」
ラグナも圭太のことを慰めるように、圭太の身体に自分の身体をこすりつけるようにしていた。


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