+抱いて欲しい+
「っは! あ、その…龍平。いいい、良いのか?」
しかしすぐに我にかえり、裕明は自分の身体に抱きつく龍平に声をかける。
出来るだけ平静を保とうと必死になっていたが、言葉はどこかぎこちない。
「…うん。裕明さんなら、俺…何されても良いよ…」
龍平は裕明の声を耳にすると、今まで胸に埋めていた自分の顔を上にあげる。
今までにない距離に、龍平の顔が裕明の前へとやってきた。
頬を赤らめ、言葉にしなくても恥ずかしいのだと感じさせる表情…
初めて見る龍平の表情…自分しか知らない、龍平の表情…
「うあっ! やば…龍平…がはっ!」
だんだんと頭の中で考えていることが、表に出てきそうになる。
それを抑え込もうとしたが、つい口から噴出してしまった。
「ちょっ、裕明さん大丈夫?」
突然のことに龍平は裕明から離れ、心配そうな表情で声をかけてくる。
『やべぇっ…やべぇよっ!!』
「だっ…だだだだ、大丈夫だよっ! 全然っ、ぜんっぜん問題ないって!」
自分のことだけを気にして伝えられることに、裕明の心はさらにかき乱されてしまう。
言葉をはっきりと言うことが出来ず、身体の動きも挙動不信になる。
目に見えて、焦っているのが解った。
「…迷惑…だったかな? 俺…」
そんな裕明の姿を見ると、龍平は再び顔をうつむけてしまい、落ち込んだ声を出してきた。
「あ…龍平?」
「おかしい、よね…でも俺、裕明さんが好きだから…凄い凄い好きだから…だから、裕明さんに…抱いて、欲しくて…」
言葉だけで、龍平の切ない気持ちが伝わってくるようだった。
裕明のことが、好きで好きでたまらない…そんな龍平の気持ちが…
最後の言葉を言う時には、下にさげた顔をさらに横に背けていた。
下を向いていても、恥ずかしさがあったからかも知れない。
『…龍平…』
自分の素直な気持ちを口にしてきた龍平の言葉に、裕明の胸は急に落ち着きを取り戻す。
『龍平は本気で気持ちを伝えてきてるんだ…だからふざけちゃいけない…』
心の中でそう思った瞬間に、不思議と焦りは消えていった。
「…龍平…俺も、だよ」
裕明は下をうつむいたままの龍平の身体を優しく抱きしめながら、そう一言だけ口にする。
いつもの自分だったら、間違いなく舞い上がっていたと思う。
けれど今日は、静かに龍平のことを抱きしめたいと思った。
「えっ…裕明さん…っ! んっ…」
意識をしたつもりはない。気がついたときには、龍平の唇に自分の唇を合わせていた。
全身は緊張で硬くなっているものの、唇はとても柔らかくて温かい…
「龍平…」
「んっ…裕明、さんっ…んっ…」
今自分たちがしていることを確かめるように、何度も何度も口づける。
そして龍平の身体を抱く裕明の手は、ゆっくりと衣服の下へと運ばれてゆく。