+好き好きおに〜ちゃんッ!!+


「それじゃあお母さん、お父さんの所に行って来るからね。宗太、お兄ちゃんの言うこと聞いて、良い子にしてるのよ」
「うんっ! 解ってるよ!!」
空の色が赤くなるような時間に、僕は玄関に立っていた。
目の前にはお母さんが立っていて、いつもよりきれいな服をきている。
それに凄く良い匂いがする。僕は余り好きじゃない匂いなんだけど…
「それじゃ宗平、頼んだわよ」
「んあ? 解ってるって。早く行けよ、父さん待ってるんだろ」
お母さんは僕の隣に立っている人に顔を向け、心配そうな声を出す。
でもそんな声とは裏腹に、面倒くさそうな声が聞こえてきた。
声をかけた相手は、僕のおにいちゃん。
僕より6つも年上で、背丈も凄く大きくて…
それに髪の毛とかも金色で、耳にも沢山きらきらするものつけてる。
見た感じはちょっと怖いと思っちゃったりするんだけど、僕はおにいちゃんのことが大好きなんだ!!
「大丈夫だよっ! だって宗平にいちゃんと一緒だもんっ! ねっ、にいちゃん」
僕は元気いっぱいの声を出して、隣にいるおにいちゃんに声をかける。
するとお兄ちゃんは僕の顔を見て優しく笑いながら、無言で頭をなでてくれた。
僕…おにいちゃんに頭をなでられるのが大好きなんだ〜…
おにいちゃんの手…凄く大きくて、温かいから…
「はいはい。それじゃ行って来るわね」
「気をつけてねー」
おにいちゃんの返事を聞くと、お母さんは玄関を後にした。
僕は右手を振り、大きな声でお母さんのことを見送っていた。
おにいちゃんは…やっぱり面倒くさそうな顔をしてた。
「さてと…飯にでもすっか…」
お母さんの姿がその場からなくなると、おにいちゃんは僕の頭から手を放し、ゆっくりとした足取りで台所の方へと向かう。
「あっ…まっ、待ってよおにいちゃん」
僕もその後ろを追いかけるように、小走りでついて行く。
時間はもうすぐ夕飯時で、僕のお腹もグーグーと音を鳴らしていた。


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