+好き好きおに〜ちゃんッ!!+


「んっ…はれ? ここっ…」
目を覚まして身体を起こすと、見覚えのある景色が目に入ってきた。
「おにいちゃんの部屋…僕、あれ?」
頭の中を整理しようとするも、記憶がぽっかりと抜けてしまっている。
「えと、確か…お風呂入ってて、それで…うーん」
僕がその場で頭を抱え込んでいると、目の前にある扉が開く。
そこには小さな洗面器を持った、おにいちゃんが立っていた。
「おっ、起きたな…大丈夫か?」
おにいちゃんは僕に気がつくと、少しだけ早足で僕の隣へとやってきた。
手に持った洗面器には水が入っているようで、ピチャピチャという音が聞こえてきた。
「う、うん…」
おにいちゃんの顔はいつもと違っていて、なんだか悲しそうな顔をしていた。
「そっか…とにかく、横になってな…」
そう言うとおにいちゃんは僕の身体を横に倒して、お布団を上からかけてくれる。
そして持ってきた洗面器の中にハンドタオルを浸すと、僕の頭の上にのせてくれた。
ひやりとしていて、なんだか気持ちの良い感触が伝わってくる。
その後おにいちゃんは布団に膝をかけ、僕の顔をずっと見てくれていた。
「ね、ねぇ…おにいちゃん…」
「ん? どうした…」
「ぼ、僕…どうしちゃったのかな? なんで、おにいちゃんの部屋で寝てるんだろう…」
ぽっかりと空いてしまった記憶がなんだか怖くて、僕は不安そうに声を出す。
するとおにいちゃんは、低い声で返事を返してくれた。
「ごめんな、宗太。俺が調子のっちまったから、お前風呂場で気を失っちまって…」
「えっ、あ…そ、そうなんだ。良かった」
おにいちゃんの言った言葉に、僕は一安心していた。
病気とかで倒れたとか言われたら、本当に怖いと思ったから…
「でもほんとごめんな…宗太」
そんな僕とは裏腹におにいちゃんの声はどんどん沈み、顔も下にさげたままだった。
「おにいちゃん…僕大丈夫だから、全然平気だよ? ちょっと…身体はまだ自由に動かないけど…」
僕は少しでもおにいちゃんに元気を出してもらおうと、そう声をかける。
「でも俺…お前に無理させたりして…」
「おにいちゃん…」
でも僕がどんなに言っても、おにいちゃんは顔を上げてはくれなかった。
「……ごめん」
「…ねぇ、おにいちゃん…」
僕はちっとも嫌じゃなかった…おにいちゃんに抱いてもらえて、凄く嬉しかった。
それはもちろん、恥ずかしいことだけど…
でもっ…でも僕は嬉しかったから…だからおにいちゃんに、元気になって欲しかった。
僕はゆっくりと身体を起こし、隣にいるおにいちゃんの顔に自分の顔を近づけていく。
「えっ、宗太…んっ」
自分からするのは初めてで、なんだか身体が震える。
それでも僕は、おにいちゃんの唇に自分の唇を合わせる。
「…んっ」
おにいちゃんが僕にしてくれるみたいに、深いキスは出来なかった。
それでも僕は、出来るだけおにいちゃんの唇に自分の唇を合わせていた。
「んっ…宗太?」
「ぼっ…ぼく、宗平にいちゃんのことっ、大好きだから…ぼくっ、全然平気だから…っ」
大好きという言葉を言うのが恥ずかしくて、僕は顔を下にうつむけながら口にする。
顔もだんだんと熱くなってきて、また頭がボーっとしそうになってくる。
「…宗太…ありがとう」
するとおにいちゃんの口から、嬉しそうな声が聞こえてきた。
「おにいちゃ…んっ」
僕はその声に気がついて顔をあげると、今度はおにいちゃんが僕の唇にキスをしてくれた。
「俺も…宗太が大好きだよ…」
「うん…僕も、大好き…」
そう言って僕は、ねだるようにおにいちゃんに何度もキスをしてもらっていた。


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