+一年に一度だけ+
Scean3
「変わってないよなー、この辺も」
見慣れた道を歩きながら、星夜はそう言う。
「そりゃ一年くらいじゃそんなに変わらないって」
「まっ、そりゃそうだけどさ」
この道は全然変わらない。星夜とずっと一緒にいたときから変わってない。
懐かしい思い出が織人の中によみがえってくる。
何度も2人でこの道を歩いて、一緒に遊んで…
「おーい、織人ー」
「えっ、あっ、何?」
思い出にふけっている織人に、星夜が話しかける。
「何じゃないって、お前の家ここだろ?」
指差す先には自分の家がある。
「あっ、あははっ、ゴメン。ちょっと考え事してたんで…」
「ったく、どうしたんだよ。なんかおかしいぞ?」
「ご、ゴメン…」
慌てて自分の家へと向かい、玄関から家の中へと入る。
家の中は静かで、誰もいないようだった。
「あれ? 今日おまえんとこのおばさんどうしたんだ?」
「なんか近所のスーパーの福引で旅行当たってさ、家俺しかいないんだ。」
「そうなんだ」
そして案内されて、織人の部屋へと入っていく。
部屋はきれいに片付いていて、去年ここに来た時と余り変わってなかった。
「キレイにしてんだな」
「そっかな? 結構普通だと思うんだけど」
そう言うと星夜は荷物を床に置くとその横に座り、
織人も自分のベッドの上へと座る。
「えっと…」
織人の部屋に入ると、話す言葉が何一つ見つからない。
家に来るまでの間は今までに何があったのかを雑談できたのに、
閉鎖された空間に2人きりになった時、何を話していいのかが解らなくなる。
無言が続き、お互いに何をしていいのかが解らない。
「あっ、星夜なんか飲む?」
沈黙に耐えかねて、織人が星夜に聞いてくる。
「えっ、あ、うん。頼むよ」
「じゃっ、じゃあちょっと行ってくるね…わっ」
ベッドの上から立ち上がろうとした瞬間、織人は体勢を崩す。
「あぶねっ!」
とっさに星夜が両手で、織人の身体を支える。
「ごっ、ごめっ…あ…」
星夜の顔が自分の目の前に映る。
織人は愛しい人の顔を間近で見ることが出来ず、すぐに横を向いてしまう。
「織人…」
「ごっ、ごめっ…俺飲みもんとって…あっん」
星夜は半ば無理やり、織人の唇にキスをする。
「…織人…俺我慢できないや…」
「せい、や?」
本当はずっとして欲しかったことだった。
愛しい人に会って、愛しい人と愛し合いたい…
織人はずっと心の中でそれを望んでいた。
好きな人と会えるのはもちろん嬉しい、
けれどやっぱり愛し合いたい…そう思っていた。
「織人?」
全身を星夜に預け、織人は小さな声で言う。
「俺も…星夜としたい…」
恥かしいと思って言えなかった言葉を、織人ははっきりと言う。
その言葉を聞くと、星夜は笑顔を見せる。