+雨+


雨は…止まない…
暗くて何もすることがなく、しかも時計のない空間は時の感覚を狂わせていく。
普段から時間など、考えなくても解ることが多い。
日が昇れば朝になり、日が暮れれば夜になる。
朝になれば目が覚めるし、夜になれば勝手に眠くなる。
しかし今は、夜になっても眠ることは出来ない。
冷たい水が降り、強い風の寒さも、そして耳障りな雑音もある。
けれどそれ以上に、クライドには眠れない理由があった。
今でも覚えてる…一人になった時の、暗い雨の降る空…
強烈なまでに印象に残る映像は、思い出と共にフラッシュバックする。
「誰か…誰か…」
小さく震える声で、クライドは口を開く。
過去と同じように、雨の降る下で誰かを求めて届かない声をあげる。
意識などしていない…ただ、無意識に声が出る。
「誰か…おれっ…!」
子どものように甘えたがる気持ちは大きくなるが、甘えさせてくれる人など誰もいない。
やがてクライドは、自分で自分を慰め始めた。
もう…自分を慰められるのは、自分だけしかいないから…


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