+雨+


「んっ…んんっ…」
半分だけ下ろしたズボンの中に、左手を入れて動かし始める。
いつもなら右手を使うのだが、流石に痛くて動かすことが出来ない。
まともな手当てのされていない右肩は、時が経って紫に黒ずんでいるようだった。
「んっ、ふっ…あった、かい…」
自分の冷たい体温よりもずっと熱を持ったもう一つの自分を左手に、クライドは嬉しそうに小さく笑う。
そしてその温かな喜びをもっと感じたいと思う気持ちが、手の動きを活発にさせていく。
「んんっ、んあぁっ…んっ、ふぁっ…」
雨の轟音の中に、遠慮のないクライドの喘ぎが響く。
最初は小さかった吐息も大きくなり、丸まり込んでいた身体も崩しだしていた。
伸ばした身体が、雨に濡れていく…それでもクライドの左手は止まらない。
「んふっ…んぁぁっ…」
ニチュニチュと卑猥な音が、左手の中で発せられる。
雨でかき消される音でも、自分の耳にははっきりと聞こえてきた。
「気持ち、良いよぉ…んっ、ふぁぁっ」
クライドの耳には、雨の音など聞こえてはいなかった。
ただ自分の慰め続ける、卑猥な音だけが耳に響く。
「んんっ…っ! んっ、ふぁぁっ!!」
先走りの液体で濡れた左手に、熱い感触が降りかかってきた。
クライドの身体は小さく跳ね、ビクビクと身体をひくつかせる。
「うっ、あっ…はぁぁぁっ…」
全身を駆け巡る気持ちよさに、快楽の笑みと熱い吐息が漏れていく。
「はぁ…ん、んっ…」
放出される精液は、その今まで触れていた左手へと全てが付着していく。
その生温かい感触は、自分の心を一気に現実へと引き戻そうとする。
感じていた温もりも、忘れようとした寂しさも全て…
「んっ…んんっ…」
クライドは汚れた手を近くにある水溜りで流し、衣服を簡単に整え再び身体を丸める。
「寒い…な」
そう一言だけ口にするとクライドは自分の顔を膝の中に埋め、深い眠りについてしまった。


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